Abstract
ビデオゲームは長い間ユーザに楽しまれているコンテンツであり,ユーザは様々な経験を様々なビデオゲームから得ていると言える.これらの体験はゲームのプレイ動画,ゲームのシーンのスクリーンキャプチャ,ゲーム内のログなどによって残すことができる.この行為はゲームにおけるライフログであると言える.しかしゲームライフログを残し,活用されることはまだ一般的ではなく,ただゲームを消費するだけとなっている.
そこで本稿では,ゲームライフログの特徴に関する調査とゲームライフログを活用するためのゲームライフログの探索,閲覧手法の提案を行う.そうすることで,ゲームライフログを残すことや活用を容易にすることができると考えられる.なお,本研究で対象とするゲームライフログの形態はスクリーンキャプチャとしている.また,本研究で対象とするゲームの種類もスクリーンキャプチャを簡単に利用できるスマートフォンゲームとした.
ゲームライフログの特徴の一つとして,ゲームライフログは複数の並列したライフログが存在することが挙げられる.現実世界のライフログは自分のライフログが1つ存在するだけであるのに対し,ゲームライフログはそれぞれのゲームで世界観が異なり,それぞれの世界観が関係することがないため,それぞれのライフログを並列したものと見ることができる.また,ユーザは,ゲーム内のガチャなどのキャラクタの出会いの場面,難しいクエストをクリアした際の編成などのメモの場面,オンライン対戦の際などに有名なユーザとのマッチングといったゲームの内容とは直接関係ないが,貴重な体験をしたシーンなどをゲームライフログとして残していた.
ゲームライフログの閲覧については,ゲームライフログを俯瞰して見ることができず,ゲームライフログの価値を見出すのが困難なことを問題視し,ゲームライフログを時間軸とゲームごとの軸によって出来る2次元平面上に配置することで,ゲームライフログを俯瞰して見ることができる手法を提案する.また,提案手法を導入したプロトタイプシステムの開発を行った.プロトタイプシステムは,2次元平面に配置されたゲームライフログをユーザが見ている範囲の移動とズームを利用して閲覧するものとなっている.このプロトタイプシステムを用いて,ユーザによるゲームライフログ閲覧実験を行った.ゲームライフログ閲覧実験では,画像提示方法によるユーザの行動の違いを調査したかったため,ゲームごとに手動で分類したゲームライフログを閲覧してもらい,その操作の動画,操作ログ,5段階のアンケートを3種類,自由記述によるアンケートによって評価を行った.その結果,ゲーム閲覧の手法として,アンケートで高い評価を得ることができた一方で,システムとしての操作性についてのアンケートでは高い評価は得られなかった.また,ゲームライフログを1000枚以上する実験協力者は一つ一つのゲームライフログを見て各ゲームでの行動の流れを確認するのが中心であるのに対し,ゲームライフログが1000枚未満の実験協力者は複数のゲームライフログを同時に見て,同じ時期に様々なゲームでどのようないイベントが行われていたかを思い出すことが中心となっていた.
ゲームライフログの探索については,ゲームライフログのうちの特定のものを探すのが困難であることを問題視し,その問題の解消のために自動分類を用いてゲームライフログの管理を行う手法を提案した.自動分類の手法は以下の3種類を用意した.
画像の領域分割を利用した類似画像分類
画像内のキャラクタの数
画像内の文字の数
これらの3種類の自動分類手法を自由に利用できるプロトタイプシステムを作成し,探索実験を行なった.探索実験はスクリーンキャプチャを500枚以上所持するユーザ9名に対して行なった.探索実験では特定の画像を探索する特定画像探索タスクと,こちらから提示したタスクに合致すると思う画像を選択してもらう目的ベース画像探索タスクの2種類の実験を行った.また,それぞれのタスクについて分類を行わない既存手法と3種類の自動分類手法を自由に利用できる提案手法の2種類の探索手法の比較を行った.実験の評価は,スクリーンキャプチャを発見するまでの時間と,-2~+2の5段階のアンケートを4項目を利用した.その結果,特定画像探索タスクでは,探索の時間は既存手法の方が短いが,ユーザの探索難易度についてのアンケートでは提案手法のほうが簡単だと評価され,ユーザは多少時間がかかっても分類がされている方が簡単に探索ができることが示唆された.目的ベースの探索タスクでは,探索の時間はユーザによって既存手法,提案手法のどちらが早いかは様々であったが,探索難易度などのユーザによる評価では良い評価を得られることがわかった.