Abstract
ひとは多くの衣服を所有しており,日常的に着用する衣服の選択を行っている.着用する 衣服の選択においては,個人の好みの他にも,時や場所,場合(TPO)などの様々な要素を 考慮する必要がある.また,トップスやボトムス,アウターなどといったアイテムを組み合 わせ,全体的なコーディネートのバランスを考えることも重要である.そのため所有する全 ての衣服を満遍なく着用することは容易ではなく,所有する衣服の中には,好んで頻繁に着 用するものから,ほとんど着用することなくクローゼットの奥に眠るものまで様々存在す る.このような着用の偏りは,着用する衣服や組み合わせのワンパターン化やタンスの肥や しといったように,所有する衣服を十分に活用することができず,コーディネートの幅を狭 めてしまう.
そこで本研究では,所有する衣服の活用を促進させるため,所有する衣服の着用の偏りを 解消させるビンゴゲーム型衣服提示システム BingoFit を提案した.ビンゴとコーディネー トを組み合わせた衣服提示を行うことで,楽しみながら自発的なコーディネートを促し,着 用の幅を広げることを期待する.
まず,手法の有用性を明らかにするため,プロトタイプシステムを実装し,短期的な実験 を行った.その結果,システムにより,普段のコーディネートでは着用することのなかった 組み合わせを選択することや着用の計画を立てるような傾向が見られ,システムを利用す ることで着用の幅を広げることが示唆された.しかし,気候の要因がシステムの利用に大き く影響を与える可能性が挙げられた.
次に,季節によって衣服の選択にどのような変化があるのか明らかにするため,複数の季 節で実験を実施した.その結果,季節や実験回数により,マスの埋め方が変化することが明 らかとなった.これらの結果を踏まえて一年中利用可能なシステム設計を検討し,BingoFit システムの改良を行った.
そして,多様なユーザに対して 1 ヶ月の連続的な実験を実施し,長期的にシステムを利用 することによる効果を調査した.その結果,性別や衣服の所持枚数によらず幅広いユーザが 利用可能であり,システム利用はファッションに対してポジティブな印象を与えることが わかった.
次に,長期実験で得た着用の記録から,着用回数に応じて衣服の配置を変化させたビンゴ カードで実験を行い,衣服の選択の誘導の可能性について検証を行った.実験の結果,着用 回数の少ない衣服を着用させることができ,衣服の着用の偏り解消に有効であることがわ かった.また,新しい組み合わせの着用についても複数見られ,継続した利用により衣服の 活用はより促進されていくと考えられる.
Information
Book title
明治大学大学院 先端数理科学研究科 修士(工学)
Date of presentation
2024/02/12
Citation
青木 由樹乃. 所有する衣服の活用促進に向けたビンゴゲーム型衣服提示手法と実践, 明治大学大学院 先端数理科学研究科 修士(工学).