学位論文

基礎的な数式の構造理解を支援するハイライト手法に関する研究

Abstract

基礎計算は応用数学の基盤になるものであり,また生活に必要な計算の基本にもなりうる.そのため,基礎計算の習得は重要である.しかしながら,算数から数学への数学的概念の違いによる認知ギャップや,数学不安を抱える人のワーキングメモリの容量不足,数学学習からの期間が空いてしまったこと,注意欠陥などが原因となり,基礎計算でミスをしてしまう.ここで,計算スキルには数式の構造を理解する能力の重要性が明らかになっており,数式の構造理解を支援することが計算ミス減少につながると考えられる.数式と同様に複雑なものとして,プログラミングがある.プログラミングツールには,シンタックスハイライトと呼ばれるソースコードの予約語や区切り記号にハイライトがされる機能が備わっていることが多い.このシンタックスハイライトにより,視覚的にソースコードの構造がわかるようになっている. そこで本研究では,「数式の一部へハイライトを行うことで,数式の構造が理解しやすくなり,計算ミスが減少あるいは計算が素早くできるようになる」と仮説を立て,数式ハイライト手法を提案する.また,数式の構造理解を支援する適切なハイライト法について実験を通して検討する. まずは,数式へのハイライトが数式の構造理解を促進し,正確で素早い計算を可能にするかを調査するためのプレ実験を行なった.プレ実験では「=」「+」「-」「×」「÷」のような数学記号に焦点を当て,「数学記号へのハイライトが構造理解を促進し,正確で素早い計算を可能にする」という仮説のもと実験を行なった.プレ実験は理想的なハイライト状態を擬似的に作りだし,2種類の実験を行うことにより調査した.プレ実験の結果,2種類の実験ともに微小であるが平均得点はハイライトありの方が高かった.また,これらの実験が数式へのハイライトの影響を反映する可能性が明らかになった. 次に,ハイライト対象を数学記号,括弧,同類項,また,ハイライト方法を文字色変え,マーカー(背景色変え),アンダーラインで組み合わせた複数のハイライト手法において,最適なハイライト法を正誤判定による実験により検討した.実験の結果,マーカーをひくハイライト法が効果的である可能性や数式の構造理解が必要な計算問題タイプにおけるハイライトは効果的である可能性,間違いを含みやすい箇所にハイライトしないと却ってミスを誘発する可能性などが明らかになった. これらの最適な数式ハイライト法の調査結果およびプロトタイプシステムの課題整理より,数式の構造理解を支援するリアルタイム数式ハイライトシステムの可能性について述べる.

Information

Book title

明治大学大学院 先端数理科学研究科 修士(理学)

Date of presentation

2024/02/12

Citation

植木 里帆. 基礎的な数式の構造理解を支援するハイライト手法に関する研究, 明治大学大学院 先端数理科学研究科 修士(理学).