学位論文

自身にのみ聴取可能な音楽によるコミュニケーション円滑化手法の提案

Abstract

コミュニケーションは,他者と関係を築くために必要な行為の一つである.しかし,このコミュニケーションを苦手とする人は多い.その理由の一つとして,コミュニケーション時の緊張が挙げられる.ここで,自身の好みの音楽を聴取することによるリラックス効果が知られており,我々はこの効果を用いてコミュニケーション時の緊張を緩和できるのではないかと考えた.しかし,一般的に音楽を聴取する際,イヤフォンやヘッドフォンなどを装着し,外界の音を遮断してしまうため,音楽を聴取しながらのコミュニケーションは容易ではない.このような問題を解決するために,骨伝導ヘッドフォンや分割磁界供給型骨伝導による常時装着音響デバイスなどが開発され,外界の音を把握しながらも音楽を聴くことが可能になってきた.このようなデバイスの存在から,音楽を常時楽しみながらコミュニケーションを行うことも可能になっている. ここで,音楽によって人間の生理的反応や行動が変容することが知られている.このことから,コミュニケーションを行う際に独立した音楽の聴取をした場合,発話のスピードや,話しやすさなどに影響が出るのではないかと考えられる.この影響を用いて,コミュニケーションが円滑に行えるよう操作できるのではないかと考えた. そこで本研究では,コミュニケーション時に個人が好みの音楽を聴取することで緊張を緩和する手法を提案するとともに,コミュニケーション時の音楽聴取が会話に及ぼす影響を用いたコミュニケーションの円滑化を行うシステムの実現を目的とする.そのために,音楽を聴取しながらコミュニケーションをした場合の影響調査を行う. 本研究では,好みの音楽を聴取しながら会話を行ってもらい,会話データの取得とアンケートを回答してもらう実験を行った.その結果,主観的な側面として,音楽を聴取することでコミュニケーションの緊張感が緩和される傾向にあり,音楽聴取によって会話がしやすくなることを明らかにした.また,音楽聴取をしながらのコミュニケーションにおいて,個人の音量の感じやすさによってこれらの影響が大きく変化することを示唆した. また,客観的な側面としては,音楽を聴取することで,音楽を聴取しない場合と比較し発話速度が減少すること,また音楽を聴取しない場合よりも会話の間が増加することを明らかにした.これらのことから,音楽を聴取することで落ち着いて会話を行うことができる可能性があることを示唆した. 本研究の主な貢献は以下の通りである. ・コミュニケーション時に音楽を聴取することでコミュニケーションにおける緊張を緩和でき,さらに音楽を聴取することで話しやすくなる傾向があることを明らかにした. ・コミュニケーション時に音楽を聴取することで発話速度が低下し,落ち着いて会話を行うことができることを示唆した.

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明治大学大学院 先端数理科学研究科 修士(理学)

Date of issue

2019/02/01

Citation

大野 直紀. 自身にのみ聴取可能な音楽によるコミュニケーション円滑化手法の提案, 明治大学大学院 先端数理科学研究科 修士(理学), 2019.

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