Abstract
軽音楽団体によるオンライン配信ライブでは,撮影機材の制約から一視点固定の映像が用いられることが多く,映像が単調になりやすい.また,視聴端末としてスマートフォンが多く画角が小さいことから,臨場感が薄れやすいという問題がある.本研究は,このような一視点固定型ライブ配信において,ライブ映像中の特徴的なシーンを自動検出し,適切な映像効果を付与することで,臨場感の向上と視聴体験の改善を目指す.
まず,漫画・アニメ等に見られる音楽表現を参考に,ズーム,集中線,画面分割等の映像効果をライブ映像へ付与するプロトタイプシステムを実装し,映像効果付与が視聴維持率や印象に与える影響を調査した.その結果,映像効果を付与した条件で視聴維持率,エンゲージメントが向上し,一視点固定型ライブ映像の単調さを緩和することによる影響を確認することができた.
次に,映像効果と音響効果を組み合わせて適用する手法を構築し主観評価実験を行った.没入感・社会的存在感・演者への興味度を指標として評価を行い,映像効果付与によりこれらの評価が向上することを明らかにした.一方,音響効果の明確な効果は確認されず,個人差や提示方法に依存する可能性が示唆された.
最後に,リアルタイム運用を想定したシステム「OneCamLiveFX」を実装した.意図的遅延を導入し発音前後動作量を参照可能とすることで,文脈に基づく効果付与を実現した.ログに基づく性能評価とライブ現場での実証実験を通して,リアルタイム環境における演出強化と追従性のトレードオフを明確化し,運用可能性と今後の改善指針を示した.加えて,視聴者アンケートから臨場感や満足度の指標が評価された一方で,誤適用が体験を損ね得ることや,主体性やパーソナライズが継続利用に繋がる可能性が示唆された.
以上より,一視点固定型ライブ配信に対して,自動的に映像効果を付与することで視聴体験を改善し得る可能性を示した.今後は,映像効果適用タイミングの判定の精度向上に加え,視聴者・演者の選好を反映できるインタラクティブな操作機能の導入により,より安定したリアルタイム運用と体験価値の向上を目指す.